「Michael Jackson」が出資し、映画監督「Bob Giraldi」の演出で製作された「Beat It」のPVについて「Michael Jackson」はインタビューでこう語りました。
『ストーリーは、”2人のギャングが喧嘩しようとしている所に僕が入って止める” というもので、テーマは ”兄弟じゃないか、喧嘩はやめようぜ” というところなんだ』
※この曲には「悪の世界に来るな、入るな！」というとても真面目なメッセージが込められています。この曲では「Beat It」は「逃げろ」という意味です。
有名な話ですが、このPVには本物のギャングが登場します。中にはプロのダンサーに混じって踊っている人もいます。
Bloods：ロサンゼルスを拠点とするアフリカ系アメリカ人のギャング・グループ
Crips：ロサンゼルスのギャング集団でチームカラーは青
敵対する本物のギャングを「Michael Jackson」が連れてきました。当初「Bob Giraldi」はこのアイデアには消極的でした。何せ本物のギャングです。俳優とダンサーの指示で忙しい「Bob Giraldi」にとっては厄介そのものだったからです。実際撮影中に2つ～3つのいざこざがあって、警察官がきて撮影を中止するよう言ったそうです。
「彼らを躍らせてくれ」
「Bob Giraldi」は警察官を説得し撮影を続けました。
ここで一つの疑問が生じます。彼ら（ギャング）は踊れるのか？
ここは振付師「Michael Peters：1948/8/6~1994/8/21」の出番です。「Thriller」の振付師としても有名な「Michael Peters」は、ダンスにおいては素人の彼らを一応（笑）プロのダンサーと踊れる位に教え込みます。
ま、実際踊りがズレていて、明らかにこの人はダンサーでは無いって分かる人がチラホラ見えますが…..因みにギャングの一方のボス役としてサングラスと白いジャケットを身につけてパフォーマンスしているのが「Michael Peters」です。
「Beat It」が全米1位になった1983年4月30日付の「Billboard」誌にこんな事が書かれました。
「Billie Jean」が7週連続1位のあと、1週だけおいて「Beat It」が1位になった。同じミュージシャンの別の曲がこんなに早く登場したのは「The Beatles」以来のことだ。」
「Billie Jean」と「Beat It」
世界的に売れた両曲は当時の「MTV」のポリシーにも影響を与えました。
黒人のビデオの放送はしない
今では信じられないような暗黙のルールを「Michael Jackson」は変えたのです。
「Billie Jean」は「MTV」で放映された初めてのメジャー黒人アーティストの曲となり、「Beat It」は黒人のミュージシャンの曲をかけないロック専門のラジオ局がこぞってプレイしました。
理由は「ライトハンド奏法」で有名なスーパーギタリスト、「Edward Van Halen」 がギター・ソロを演奏しているからです。
※PVには登場しません
アルバム「Thriller」の製作中、プロデューサーの「Quincy Jones」が「Edward Van Halen」に電話をかけ、この顔合わせが実現します。
Quincy Jones「ちょっと君にやってもらいたい曲があるんだけど。やる？」
「Edward Van Halen」はこう語っています。
「ギャラなんかいいんだ。好きで手伝ったんだから」
「Edward Van Halen」はホントにノーギャラで引き受けた様です。しかもギター・ソロはアドリブだったそうです。凄いですね。
また、「Bob Giraldi」は後にこう言いました。
「Michaelは僕らの時代のクロスオーバーアーティストだ」
全くその通りですね。
最後にこのPVでずっと気になっている登場人物がいます。PVの【04:18】頃に現れてバブル・ヘッドする東洋系の人物です。当時高校生の私たちは勝手に「謎の香港人」と呼んでいました（笑）。
誰か知っている人がいたら是非教えて下さい。30年来の疑問です。
Michael Jackson – Beat It [Epic:1983]