名門「A&M」レコードの創始者の一人(1990年にポリグラムに売却)として、ポップ・ジャズ・トランペッター、コンポーザーとして数々のヒット曲と共にチャートの常連であった「Herb Alpert」は1974年頃から数年チャートから姿を消しました。
理由は定かではありませんが、5年後の1979年に本曲「Rise」でカムバックを果たします。因みに「A&M」の「A」は「Alpert」の「A」なのはお馴染みですね。
この頃音楽業界は「ディスコ・ミュージック」に大きな影響を受けていました。多くのアーティストがこの「キワモノ」とどう付き合うのか試行錯誤していたのは間違いありません。
「Herb Alpert」もその中の一人でした。実は彼のカムバックの手助けとなったのには2つの要因がありました。
1つは、「Herb Alpert」の甥「Randy Alpert」の助言です。「Randy Alpert」は「Herb Alpert」にレコーディングした曲をディスコ・バージョンにリミックスしてリリースすべきだと主張しました。
当初この考えについていけなかった「Herb Alpert」でしたが時代の流れを感じて渋々ながらこのアドバイスを受け入れます。しかし「Herb Alpert」にとって「ディスコ・ミュージック」は到底受け入れ難いもので、レコーディングはすぐに中断されてしまいます。
そこで急遽「Randy Alpert」と友達の「Andy Armer」が作曲した「Rise」をレコーディングします。「Rise」はダンス・ソングでしたが「Herb Alpert」はテンポを落として演奏しました。
レコーディングが終わる頃には「これはイケる。No1にきっとなるぞ!」と言う程「Rise」を気に入ったそうです。
もう一つの要因はテレビ・ドラマです。「Rise」が全米チャートに登場(83位)しゆっくりと上昇し始めた頃、ABCテレビのディレクターが人気昼ドラ「General Hospital」で使用したところ、チャートの上昇が一気に上がり1位へと登りつめました。
因みに「Rise」はドラマの中でヒロインがレイプされる場面で効果的に使用され、回想シーンでも使われることで有名になりました。
余談ですが、「Rise」はある間違いによりイギリスでも大ヒットしました。
レコードは通常のシングル盤(7インチ:17cm)であれば45回転でプレイします。
一方、当時出始めたロング・バージョン(シングル盤と同じバージョンの場合も有)が録音されている12インチ・シングル(30cm)は、アメリカ盤は33回転、イギリス盤は45回転で録音されているのが一般的です。
当時の英国のDJ(ラジオ)達は回転数を間違え45回転でプレイしました。しかしボーカルが収録されていない「Rise」は速いスピードのままでも違和感が無かったため、間違ったテンポのままヒットしてしまいました。
世の中何が起こるかわかりませんね。
ではまた~♪
Herb Alpert – Rise [A&M:1979]